お隣さんの隣
映画を見始めたころには湯気があがっていたココアがすっかりぬるくなったころ。
時計は6時をさしていた。
『じゃあ私そろそろ…』
夏樹ちゃんがそう言いながら立ち上がった時、私の部屋のドアが開いた。
『あのねっ、今からお客さんが来ることになっちゃってね、夏樹ちゃんには帰ってもらわなくちゃならなくなったの…』
ドアを開けて入ってきたのはお母さんだった。
「お客さん?」
『うん、お母さん明日だと思ってたら今日だったみたい』
お母さんは夏樹ちゃんに“ごめんね”と付け足した。
『全然大丈夫ですよっ。
今から帰ろうと思ってましたし』
『本当?』
『はいっ!
じゃあ佐奈、また明日ねっ。お邪魔しました』
夏樹ちゃんは元気よくそう言うと自身に良く似合っているショルダーバッグを肩に掛けて颯爽と帰っていった。