お隣さんの隣
確かに呼んだというよりは、名前を口にしたといった方が正しいかもだけど、そんなに必死にならなくても…。
『呼んでないったら呼んでないのっ。
もう、早く自分の教室帰りなさいよ!』
『わっ、おい!夏樹っ』
立ち上がった夏樹ちゃんは、菜月君の背中を押して無理矢理教室から追い出し、ドアをピシャリと閉めた。
『なんだよもーっ、気になるじゃんかー!!』
ドアの向こうから菜月君の声が聞こえる。
廊下の人きっとビックリしてるだろな。
何を言っても意地でも教室に入れない夏樹ちゃんに、諦めたのか菜月君は『ぶー』と言い拗ねて帰っていった。
『はぁ、無駄な体力使った…』
「彼氏を無駄とか言わないのっ!」
席に帰ってきた夏樹ちゃんはため息をついて、机にうつ伏せた。
「てゆうか夏樹ちゃん…、なんで“呼んでない”とか言ったの?」
私がさっきの話を掘り返すと、うつ伏していた顔をパッとあげた。
『えと、それは…』
顔をあげた時は驚いた顔だったのに、私がしっかり目を見つめると、目を反らしてごもりだした。
なんか菜月君がいじめる理由が分かるなぁ。
「ねぇ、教えてよ」
いつもは怒られてばっかりなのに、今ばかりは少し強く言ってみる。
『う……』
そうすれば夏樹ちゃんはもっと追い詰められていく。