お隣さんの隣




燕君の表情が変わった気がした。








『だから…からかってないと言ってるでしょう?』



椅子を回転させられて、燕君と正面を向き合う。
椅子の背もたれを持っている燕君との距離は近くて。






至近距離で目が合って、恥ずかしくて反らさないとヤバそうなのに“逃がさない”と言わんばかりな目に捕まって、そらすに反らせない。





『からかったことなんて一度だってありません。
佐奈を好きだって気持ちとか、キスしたいって欲望も、俺は大真面目です』




欲望って……っっ。
なんか照れる。




「分かったから…」


とにかく恥ずかしい。
欲望とか言われてからはさらに。



『分かってません』




だから椅子を元に戻して話題をそらしたいのに、燕君はそうはさせてくれなくて。








『佐奈は思わないんですか?何かしら理由をつけてでも俺に触れたいだとか、俺にもそう思って欲しいだとか』






“燕君に触れたい”






…………………?









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