ラストメッセージ
俺たちが途方に暮れて顔を見合わせていると、菊川先生が美乃の様子を見に来た。


「美乃ちゃん、調子はどうかな? 熱は少し下がったようだけど」

「はい……」

「ちょっとごめんね」


菊川先生は笑顔で頷いて、手際良く彼女の診察を始めた。
あとから来た内田さんが、いつものように体温計を差し出した。


「美乃ちゃん、夕食はどれくらい食べられた?」

「半分くらい……」

「体温は……三十七度か。まだ微熱だね。気分はどう?」

「大丈夫です……」


内田さんと菊川先生からの質問に、最低限の言葉で答える美乃はやっぱり全然笑わない。
こんな時すら、彼女はいつも笑っていたのに……。


菊川先生や内田さんも少しだけ困ったように美乃を見て、俺たちに向かって苦笑を零した。
俺は、なにもしてあげられない自分自身が情けなくて、なによりも悔しかった。


「ちょっと話があるんだけど、いいかな?」

「はい……」


美乃は小さく頷いて、菊川先生の顔を見た。


「これは熱が下がったら……の話だけどね?」


すると、先生が優しく笑った。


「一日だけなら、外泊の許可を出すよ」


「えっ!?」


俺と信二と広瀬は同時に驚きの声を上げ、顔を見合わせた。


外出許可が貰える……?


本当に、意外な言葉だった。
頑なに首を横に振って反対していた菊川先生の口から、外泊許可が出たんだ。


「予想通りの反応だね」

「あっ……! いや、許可がもらえるとは思ってなかったんで……」


俺はまだ半信半疑のままだったけれど、なんとか笑顔を見せた。


「ただし、条件はたくさんあるからね?」


先生はそう前置きしてから、外泊の条件を話し始めた。

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