ラストメッセージ
部屋の中には、静かな時間が流れている。
十分という時間が、今は無性に短く感じた。
「もう、時間だから……」
小さな声で告げると、美乃は瞳に涙を浮かべていた。
「もう、ここには来れないね……」
また来れるよ……。
その一言が、どうしても言えなかった。
彼女の表情を見ていると、気休めにもならない言葉なんて口にできるはずがなかった。
俺は胸の奥が軋むのを感じながら、無言で立ち上がって車の鍵を手にした。
玄関に向かおうすると、廊下で袖口を引っ張られた。
「どうした?」
美乃の顔を覗き込み、できるだけ優しく微笑みながら首を傾げる。
俯いたままの彼女が、いつもよりも小さく見えた。
「美乃はまだここで待ってろ。車、持って来るから」
美乃は首を横に振って、本当に微かな声で言葉を紡いだ。
「キス……して……」
今にも消えてしまいそうなくらいの小さな声と、悲しみを帯びた瞳。
眉を寄せて微笑みながら頷いた俺は、そんな彼女の瞳を真っ直ぐ見つめて、額と頬に優しいキスをした。
続けて、唇にもくちづける。
廊下のひんやりとした空気が頬に触れる中で、ただ夢中で何度もキスをした。
もういっそのこと、このまま美乃をさらってどこかに逃げてしまいたい……。
行き着く先はどこでも構わないから、ずっとずっとふたりでいたい……。
自分でもバカげた考えだと思う。
それでも俺は、何度もキスを交わしながら、現実から逃げることだけをひたすら考えていた。
十分という時間が、今は無性に短く感じた。
「もう、時間だから……」
小さな声で告げると、美乃は瞳に涙を浮かべていた。
「もう、ここには来れないね……」
また来れるよ……。
その一言が、どうしても言えなかった。
彼女の表情を見ていると、気休めにもならない言葉なんて口にできるはずがなかった。
俺は胸の奥が軋むのを感じながら、無言で立ち上がって車の鍵を手にした。
玄関に向かおうすると、廊下で袖口を引っ張られた。
「どうした?」
美乃の顔を覗き込み、できるだけ優しく微笑みながら首を傾げる。
俯いたままの彼女が、いつもよりも小さく見えた。
「美乃はまだここで待ってろ。車、持って来るから」
美乃は首を横に振って、本当に微かな声で言葉を紡いだ。
「キス……して……」
今にも消えてしまいそうなくらいの小さな声と、悲しみを帯びた瞳。
眉を寄せて微笑みながら頷いた俺は、そんな彼女の瞳を真っ直ぐ見つめて、額と頬に優しいキスをした。
続けて、唇にもくちづける。
廊下のひんやりとした空気が頬に触れる中で、ただ夢中で何度もキスをした。
もういっそのこと、このまま美乃をさらってどこかに逃げてしまいたい……。
行き着く先はどこでも構わないから、ずっとずっとふたりでいたい……。
自分でもバカげた考えだと思う。
それでも俺は、何度もキスを交わしながら、現実から逃げることだけをひたすら考えていた。