ラストメッセージ
第十五章 冷たいキス
クリスマスから数週間が経ち、街は年末年始の慌ただしさが嘘のようにまたいつも通りの景色を見せていた。


美乃の体調は年が明けても回復せず、どんどん悪化していった。
何日も高熱が続いて食事も喉を通らないし、点滴や薬の効果もまったくと言ってもいいほどない。


きっと、いつ死んでもおかしくないのかもしれない……。
でも、もしかしたら病気が治るかもしれない……。


俺は、微かな希望やありえないようなことばかりを、毎日毎日繰り返し考えていた。
だけど……一月の下旬になると、そんなことも考えられなくなるほど、彼女はひどく衰弱してしまっていた。


会話もほとんどできなくなり、生死の境を彷徨う日々。
多数の機械を着けた姿は、“生きている”のではなく、ただ“生かされている”だけのように見えた。


そんな状態でも、俺はできるだけ美乃の傍にいて、彼女と同じ空気を感じていたかった。
常に傍にいれば、体調が比較的マシな時は多少の会話もできた。


美乃は話ができない時でも時々微笑んでくれて、それが無性に嬉しかった。
俺にとって、彼女の笑顔は精神安定剤みたいなものになっていた。


美乃がほんの少しでも笑い掛けてくれたら、本当に安心できた。
それはたぶん、彼女が生きていることを実感できるからだと思う。


だから、信二や美乃の両親よりも、俺の方が美乃と過ごす時間が長かった。
俺たちはいつも指を絡め合い、手を繋いで過ごしていた。


他にはなにもすることがないけれど、俺たちにとって一緒にいることに意味があった。
正直なところ、『美乃にとってもそうだ』と断言することはできないけれど、少なくとも俺はそう感じていた。


二月に入ると、何度か美乃の熱が下がることもあった。
ただ、どんなに低くても微熱は出ていたけれど……。

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