ラストメッセージ
「疲れてないか?」

「大丈夫だよ」


美乃をベッドに寝かせると、彼女は微笑みながらゆっくりと続けた。


「ねぇ、伊織……。さっきの人って親方さん?」

「ああ」

「優しい人なんだね……。ちゃんと伊織のことをわかってくれてる……」

「そうだな……」

「伊織……。親方さんに頭を下げて、前の仕事に戻って……」


俺が目を見開くと、美乃が柔らかい笑みを浮かべた。


「あんなに伊織のことをわかってくれる人、きっと他にいないよ? 大切にしてもらった分、伊織もちゃんと恩返しをしなきゃ……」

「ああ……」

「私のせいで、いっぱいつらい思いさせて……ごめん、ね……」


彼女は疲れてしまったのか、最後は囁くように話して眠ってしまった。
寝息を聞きながら、眉を寄せる。


美乃の手を握りながら、公園での言葉と今言われたことを、ずっと噛み締めていた。
眠っている彼女を見つめながら、ずっと落ち着かなかった。


美乃と話せたことも、久しぶりに一緒に外出ができたことも、本当に嬉しかったけれど……。昨日までは何度も危険な状態に陥っていた彼女が、今日は外出までできたことが不思議だった。


同時に、心に不安が芽生えた。
公園での会話も、さっき言われたことも、まるで遺言みたいに思えてしまう。


胸騒ぎがする……。


当たってほしくない予感が、俺をますます不安にさせる。
面会時間が終わるまで、俺はずっと美乃の手を握っていた。


だけど、あっという間に時間が経ち、面会終了時刻の三分前になった。
なかなか手を離す勇気が出なかったけれど、相変わらずスヤスヤと眠っている彼女を残し、不安を抑えながら病室を出た。

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