ラストメッセージ
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俺と美乃が出会ったのは、一昨年のクリスマスイヴだった。
その日も、俺はいつものように走っていた。
ただ、いつもと少しだけ違ったのは、家を出た時間が遅かったこと。
仕事が休みだったから、ゆっくり寝ていたんだ。
家を出ていつもと同じ道を走っていると、近所の病院の前で人とぶつかりそうになった。
「あっ、すみませ――」
「いたっ……!」
俺が謝るよりも先に、そいつはその場に転んだ。
おいおい、嘘だろ!? ぶつかってねぇし……。
「大丈夫?」
ため息をつきたくなるのをこらえ、とりあえず手を差し出した。
地面に座り込んだのは俺よりも年下に見える女で、彼女は俺の手を取って立ち上がった。
「すみません……」
「怪我は?」
すぐにでも立ち去りたかったけれど、相手の様子を確認する。
「大丈夫です」
女はそう言ったものの、左足を少しだけ引きずっていた。
「足、痛いんじゃないのか?」
気づいたからには無視もできず、仕方なく尋ねてみた。
「本当に大丈夫です! 急いでるから……」
女はどこか落ち着きがなくて、慌てて歩こうとしたけれど……。
「……っ、痛っ!」
顔をしかめながら、左足首を押さえた。