ラストメッセージ

***


俺と美乃が出会ったのは、一昨年のクリスマスイヴだった。


その日も、俺はいつものように走っていた。
ただ、いつもと少しだけ違ったのは、家を出た時間が遅かったこと。
仕事が休みだったから、ゆっくり寝ていたんだ。


家を出ていつもと同じ道を走っていると、近所の病院の前で人とぶつかりそうになった。

「あっ、すみませ――」

「いたっ……!」

俺が謝るよりも先に、そいつはその場に転んだ。


おいおい、嘘だろ!? ぶつかってねぇし……。


「大丈夫?」


ため息をつきたくなるのをこらえ、とりあえず手を差し出した。
地面に座り込んだのは俺よりも年下に見える女で、彼女は俺の手を取って立ち上がった。


「すみません……」


「怪我は?」


すぐにでも立ち去りたかったけれど、相手の様子を確認する。


「大丈夫です」


女はそう言ったものの、左足を少しだけ引きずっていた。


「足、痛いんじゃないのか?」


気づいたからには無視もできず、仕方なく尋ねてみた。


「本当に大丈夫です! 急いでるから……」


女はどこか落ち着きがなくて、慌てて歩こうとしたけれど……。

「……っ、痛っ!」

顔をしかめながら、左足首を押さえた。

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