ラストメッセージ
「着替えるね」


美乃はパジャマを出し、ベッドに乗ってカーテンを閉めた。


「手伝ってやろうか?」

「いやいや、兄ちゃんが……」

「バカッ‼ ふたりとも変態っ‼」


からかう俺と信二に、彼女がカーテン越しに怒った。


「美乃ちゃん、私が手伝うよ!」


広瀬は、そっとカーテンを開けた。
美乃はパジャマに着替えてメイクを落としたあと、広瀬に髪を洗ってもらっていた。


「髪、乾かしてやるよ」

「自分でできるよ?」

「いいから貸してみろ」


ドライヤーを受け取って、彼女の髪に触れる。
温風に靡く髪から漂うシャンプーの香りが鼻をくすぐるようで、髪に触れるのが心地好かった。


「やだ、なにこれ⁉ ボサボサじゃない!」

「そんなことないだろ? いつもと一緒だって!」

「全然違うよっ!」


美乃が頬を膨らませながら拗ね、恨めしげにしていた。
それでも、俺に髪を乾かしてもらったことが嬉しかったのか、彼女は不満を口にしながらもそのまま過ごしていた。
そんな姿を見て、無性に嬉しくなった。


夕食が運ばれてくる前に信二と広瀬と病室を出て、そのまま三人で夕食を食べに行くことにした。
場所は、高校生の時によく行ったファーストフード店だったけれど。


ハンバーガーを食べながら、俺たちは昔話に花を咲かせた。
高校時代の先生のこと、バカな思い出や修学旅行の話といった、他愛もない話で盛り上がっていた。


こうして過ごしていると学生時代に戻ったようで、なんだか懐かしさが込み上げてくる。
だけど、美乃はごく普通の学生生活を送ってこられなかったんだと思うと、ほんの少しだけ切なさを抱いてしまった。


しばらく話したあと、俺は思い切ってさっきからずっと考えていたことに触れた。

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