ラストメッセージ
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本格的に秋が深まり始めた頃、久しぶりに信二と広瀬に会った。
ふたりと会うのは、水族館に行った日以来だ。
あの時の事を思い出すと気まずさもあったけれど、俺たちはお互いに普通に接した。
信二と広瀬は、早々に俺の髪の色をからかってきた上、ふたりは理由を知ってるから大爆笑した。
「美乃から聞いてたけど、本当に真っ黒だな〜! 高校から茶髪だったから、黒髪なんて染井じゃないなー! ぶっ……ありえねぇっ!」
「ほーんと! 美乃ちゃんのおかげで、珍しい染井がいっぱい見れちゃう! この間の車の中の事といい……。ぷっ……!」
信二と広瀬があまりにも騒ぎ立てたせいで、内田さんに怒られてしまった。
なぜか頭を下げる羽目になった俺は、疲れ切って深いため息を漏らす。
程なくして、ようやくふたりが落ち着き、病室には静けさが戻った。
「そういえば、パパもびっくりしてた! この間、会ったんだよね? 『髪の色が違ったから誰かわからなかった』って、目を丸くしてたよ」
「ああ。俺もあんな時間に会うと思ってなかったから、びっくりしたんだ。挨拶しかできなかったけど……」
仕事の昼休みを利用して病院に来た時、たまたま美乃の父親に会った。
一瞬だけ不思議そうな顔をしていたからそうだとは思っていたけれど、髪を黒く染め直したくらいでそんなにわからないものなんだろうか、と首を傾げたくなる。
「パパは、今の方がいいって言ってたよ!」
とりあえず、印象は悪くなかったみたいだ。
美乃の父親が言う『ヤンキー』の枠から外れたことに、ひとりで安堵した。
「あのさ、ちょっと話があるんだけど……」
「なんだよ、急に……」
その直後、唐突に改まった信二からただならぬ雰囲気が伝わってきた。