ラストメッセージ
「それにしても、急なのによく間に合うな。準備と大変なんだろ?」

「ある程度のことは決めてたから平気よ」

「由加は昔から、一度決めると行動が早いからな〜!」


信二は苦笑いしていたけれど、その顔は幸せそうだった。
ふたりの行動が早いのは、美乃の病気のことがあるからだ。


彼女は元気そうにはしているけれど、日に日に体調が悪化し、体力も少しずつ落ちてきた。
まだ元気な日があるものの、明らかに痩せ細っている。


二週間後とは言え、美乃がどうなるのかなんて誰にもわからない。
明日死ぬかもしれない。今、危篤になる可能性もある。そういう病気なんだ。


美乃は二十一歳で、数名の医師から宣告された余命よりも一年以上長く生きている。
だけど……それは毎日死と隣り合わせの世界だ。


「明日は美乃ちゃんの服も見に行こうね!」

「由加のドレスに、美乃の服か〜。楽しみだな!」

「うん! いっちゃんは、どんな服がいいと思う?」

「えっ?」

「もうっ! いっちゃん、ちゃんと聞いてなかったの?」

「ごめん、ちょっと考え事してた」

「考え事? なぁに?」

「あー、ほら、仕事だよ! それより、なんの話だったっけ?」


考えていたことがバレないように、必死に笑顔を繕って誤魔化す。


「明日のことだよ。由加さんが私の服も見に行こうって!」

「そっか。それより、外出許可は取れそうか?」

「どうかな? 少しくらいなら大丈夫だと思うけど……。あとで先生に頼んでみるよ」

「じゃあ、俺はもう帰るよ」

「え……? 早いね……」

「ごめん、今日はちょっと用事があるんだ。じゃあな!」


本当は用事なんてなかったけれど、俺は逃げるように病室を出た。

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