短編集
3.缶コーヒー
【缶コーヒー】

鼻歌でいい気分だったのに、横から持っていた特コーヒーを奪われた。

「なっ佐藤くんそれ!!」

「ナイスタイミング」

「いやだから待って!!」

私の声も聞かず、勝手に開けて飲んでしまった。
あーあ知らないよ?

佐藤くんは飲んだ瞬間、顔をしかめた。

「あっま、何だよこのコーヒー!?」

「だから言ったじゃん。それ、特コーヒーだよ」

まだ変な顔してる佐藤くんから特コーヒーを取り上げて一口飲んだ。

うん、甘くて美味しい。

「うげ、あの甘いだけのコーヒーかよ。てかコーヒーでしらない……ぃてっ」

「何言ってんの。この甘さのコーヒーだからこそいいんじゃん」

まだ残っているのをちびちび飲む私を嫌そうな顔して見るから、足を踏んで反論する。

いくら甘いものが嫌いだからってそんな顔しなくてもいいじゃん。
それに……。

「甘党の私が普通のコーヒー飲むわけないし。いい加減覚えたら?」


つきあい始めて早数ヵ月、こういうのがたびたびあった。私が持ってるものを食べたり飲んだりしようとする。
大抵が甘いものだから毎度撃沈するんだけど。

「別にいいだろ。喉乾いてたんだよ」

帰るぞ、と言ってさっさと歩き出してしまう。

ワケわかんない。
好きじゃなきゃつきあいきれないよ、こんなやつ。


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