REVERSI
だけどそれが、不自然じゃなくて、探り合いでもなくて、なんだか変な気分が抜けない。
いまだにこの人の横にいる事が違和感たっぷりなのに。
「―――食べたい」
「え?」
僚の声で飛んだ意識を戻す。
「『ニューヨークホットドック』」
そう呟いた声がやけに胸に響く。
ちらりとあたしを見た瞳は悪戯っぽく光って、これ程大人な人なのに、妙な色気。
漠然と『あの頃』を思い出したあたしは、なんて単純なんだろう。
「行くぞ」
片道二時間半、だけど気付けば、車は既に進行方向を決めていてこのまま行けば案外早く着く。
日を落とした夜空がやけに綺麗で、あの日みたいだと思った。