REVERSI
「久瀬さん、いい男」
単語を並べるマスターの口調が面白い。
「ん、確かにいい男」
京ちゃんは、ニッと笑ってそれを肯定した。
「手出さないでよ、うちの大事なオーナーだから」
マスターはグラスを磨きながら京ちゃんにそう言う。
「オーナー?」
「知らなかった?」
「当たり前、初耳」
京ちゃんとマスターの小声のやり取りは、まるで別次元みたい。
「聖ちゃんは知り合いでしょ?知ってた?」
だから不意に向けられた疑問文にも
「知らない」
淡白な答えしか出せなくて、あたしはピンク色のカクテルをクイッと飲み干した。