REVERSI
バーを出てから、無意味にテンションを上げたあたしは京ちゃんにもたれかかるようにして、夜風を顔にあてる。
「ねー、京ちゃん」
ビルの隙間から見えるのは、ネオンに照らされたやけに明るい夜空だけで、
「星なんて見えないねー」
別に見たかった訳じゃないし、そんな柄にもないロマンチックな事言いたかった訳じゃないけど、この場所に来て二年。あたしはまだ空を見上げれば星が当たり前に輝く日常を覚えていて、夜明け前の澄んだ空気を恋しく思っているのかもしれない。
「んー…」
聞いてるのか、聞いてないのか京ちゃんは気の抜けた返事を返して、あたしももう視線を明るい闇から離した。