REVERSI
京ちゃんの背中はすぐに見えなくなって、ううん、なんだ、これ、目が霞んで、
「…よ、吉沢さん」
ツトムがあたしを見てるのが分かるけど、あたしはツトムを向けない。
「…本当に、ごめんなさい」
「謝るツトムは気持ち悪い」
「吉沢さ、ん」
目が熱い。
やだな。涙ってこんな簡単に出るものだっけ。こんな雫いらないのに。
「あの、殴られたのって普通に俺が悪いんです」
ツトムが『おずおず』という言葉がぴったりくる言い方で話し始める。
「怒りませんか?」
「多分、怒る」
ツトムは殴られた頬を触りながらため息をつく。
「タクシー捕まらなくて、だから、『二人ともお持ち帰りしてヤっちゃおっかな』ってつい言ったんです。いや、そんな気全くないですハイっ!で、その俺の後ろを今の『京ちゃん』さんがいたような、」
…、ツトム。
「あんたが悪いんじゃん」