REVERSI
「ごめん、一本貰った」
いつも、この部屋には誰かしらの煙草が置かれていて、それは吸っていいっていう暗黙のルール。
だから、ツトムも、
「構いませんよ。つーか、吉沢さん煙草吸うんですね」
安易に頷いた後、意外そうな声を漏らした。
「気分転換」
ほんと、それ。
「あー分かります。俺もう頭フラフラですよ」
ツトムはブルブルっと犬みたいに短髪の頭を振った。
それから、下らない話に花が咲く訳でもなく、あたしは部屋をさっさと出る。
「息抜きお疲れさまでーす」
ヘラっとしたツトムの笑顔とその声が、あたしの頭の先まで響いて、少し笑った。