REVERSI

だから、仕事が終わって20時を時計が知らせた時間。あたしは携帯を鳴らす。
短い電子音。あまりにも出るのが早いから逆にびっくりした。


『聖?』


クリアに聞こえたその声には驚きと微妙なニュアンスが籠もっていてあたしはフと笑う。


「連絡、くれたのにごめんね。今週中に時間取れるかな?」


いきなりごめんね、と申し訳なく謝るあたしに、麻由は軽やかに甘い声で笑った。


『いいよ、全然!嬉しい!聖、仕事終わり?』

「うん」

『じゃあ、今!いまからじゃ駄目かな?』


そう言った麻由に拒む理由もなくて、


『誰もいないから、良かったらうちにきて』


と続いた声にあたしはゆっくり頷いた。


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