REVERSI

僚が触れた場所が熱い。啄む様なキス。優しい温度。

あたしには勿体ない。

勿体なさ過ぎて目眩がする。



だけど、



「僚、あたし達はどうしても交差しない」


あたしの言葉を黙って聞く僚。瞳は揺れることなく真っ直ぐあたしを見つめる。



「なんでだろ、ムカつく」


初めて出会った時には、あたしには一穂がいた。

「厄介だと、いうの分かるよ。」


そして、今、こうして僚のそばにいてドキドキして胸がキュウとなるのに、くすぶる言いようのない感情がジンジンするのに、


それは恋だと、はっきりゆってしまう事だって出来るのに、


「色んな好きの形があって、あたしは僚にはっきりと惹かれてて、だけど、」


だけど、


「もうひとつ大事な感情がきれいにそれを足止めしてくれてる」


尤も、その感情も報われる事はないけど。


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