REVERSI

雑然としたマンションの一角。こざっぱりした部屋、必要なもの以外何もない部屋は執着心が少ない彼らしくて、パイプベッドに丸くなって眠る京ちゃんを思い出す。

京ちゃんの住むのは一番端の角部屋。二歩手前で携帯を取り出した。


RuRuRu……………


無機質な携帯音の後にすぐ聞こえた、間延びした声。


「あ、京ちゃん?元気?今どこ?うん?ああじゃあ今から行くから」


出てくれて良かった。というか、居てくれて良かった。だってもう来ちゃったしね。怖っ。
ほぼ一方的に機械越しの通話を終えて、あたしは目の前のインターフォンを押す。少しだけ緊張が走るのを意識しないように大きく息を吸い込んだ。


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