REVERSI
「久しぶり…です」
「ああ」
「元気でしたか」
「ああ」
「変わりありませんね」
「君も」
淡白な会話が続く。マスターは気をきかせたのか、自然に場所を離れて、だからといって二人の空気は体に悪すぎる。空腹が、吐き気を伴ってピークに達した。
沈黙が、痛くて、出されたいつものカクテルをクッと飲む。酔える筈もない状況に笑いさえ出ない。
あたしはその冷たい位整い過ぎた横顔に目線を送る事さえ出来ず、空のグラスをただ眺める。
「…探した」
だから、
「あれから、ずっとだ」
そんなあたしを、射抜くように見つめた深い瞳と狂わせそうに魅力的な泣きボクロにあたしは息を呑んで、
「…僚」
無意識に彼の名を呟いた。