REVERSI
出会ったあの日の時みたいな目だ。と思った。
捨てられた子犬みたいな。何もかも諦めて、それなのにまだ何かを求めているような。
正直、京ちゃんの言葉全部に嘘がないとは思えない。
麻由に対する感情もあたしに対するものも、あやふやで、靄がかかったようで、
だけど、あたしが『必要』だと言った、それにどんな意図があったとしても口に出したのは事実。
不安定という言葉を使ったのはあたしだったかな、そう、麻由に対して使ったけれど、
京ちゃんの方がずっと不安定だ。
なんで、気付かなかったんだろう。
なんで、今気づいたんだろう。
突き放すのに、追いかけてくるのを確認するような彼は、いつだってあたしが手を取れば素っ気なく、だけど嬉しそうに握り返した。
あたしに京ちゃんを突き放せる筈がない。