REVERSI

京ちゃんは欲しいものを欲しいと言わない人だと思った。今も思う。
激しい感情を持たないんじゃなくて見せない。そんな人。


だから麻由と想いが通じ合っているなら、環境がどうであれ傍にいるべきだと思った。


だけど、京ちゃんは必要無いという。


それがどんな思いなのかなんて京ちゃんにしか分からない。


――――手を伸ばして、京ちゃんがあたしを抱き締める。タバコと香水の匂いが鼻を掠めて、あたしはぼんやり京ちゃんの匂いだ、と思った。


京ちゃんが、こんなに真っ直ぐにあたしを求めてくれたのは、初めてで。


嬉しいけど、嫌だな、


だって、やっぱりあたしと京ちゃんの間には恋愛って言葉は成立しないと気付いたから。


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