REVERSI
なんて、ふざけてたのに。
「吉沢、」
笑いをこらえていたあたしに木元さんが馬鹿に真面目な声を出す。
「仕事、辞めるなよ」
一瞬の間があって、木元さんの細い目は今も鋭く、だけどどこか心配するような優しさを含んでいるのに気付いた。
「――辞めませんよ」
うん、妥協、だとか、充実だとかやりがいだとか、目標だとか、後でついてくるオプションじゃなくて、
「この仕事、案外好きですから」
プラス思考で生きたいんだな。