REVERSI
それから、麻由が来るまで殆ど時間はかからなかった気がする。あれからお酒の力は借りたくなくてグラスには口を付けなかった。京ちゃんは一度席を立った。トイレにでも行ったのかな。緊張感の無いその態度が恐ろしく恨めしい。
カランと店のドアが開いて、口を結んだ麻由があたしの隣に座る。目が赤かったから、泣いたのかもしれない。京ちゃんはそんな麻由をちらりとも見ず、アルコールを口に運んでいる。
「…ごめん、急に」
麻由があたしに掛けた電話はこんな事になる前はどんな内容だったのか、なんてちょっと過ぎった。
「いいよ。あたしも、会いたかったし」
掠れた声で麻由は小さく呟いた。