REVERSI
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履き慣れたハイヒールを片手にぶら下げてまだ明るい夜道を歩く。流石に裸足は路面が足に痛い。だけどお気に入りだった靴はヒールの部分が見事に折れてしまった。長年無理をさせたんだから仕方ない。ただこのタイミングだと余計悲しくなる。
ビルとビルの間に僅かに星が見えた。見たかったものじゃないけど、街の明かりに負けまいと輝く星に何だか泣きそうになった。
重度の情緒不安定かな。
笑いたくなったり泣きたくなったり。
だけど心は穏やかだ。一番良い選択肢を一番良い、とは言い切れないけどまずまずな感情で選んだ。
ねぇ、京ちゃん。君が笑うならやっぱりそれで良い気がするよ。あのどこまでも緩い笑顔が好きだから。愛しさの滲む微笑なんて求めてないから。