REVERSI
僚は人目も全く気にせずあたしを抱きしめると、嘘みたいに軽々とお姫様だっこをした。
「り、僚」
「…黙りなさい」
口調が鋭くて、冷えた声。あたしの目を見ようとしない僚に、憔悴していく。堪えた感情が重くて、重くて、手放したい。
「何を考えている」
僚があたしを見ず、ネクタイを外したシャツからフワリと女物の香水がして、もう、どうしょうもない、
「…うるさいっ」
「聖」
「うるさい、うるさい」
「聖」
「っなんなの、なんで、いつもこんなタイミング、ふざけないでよ、わけわかんない」
降ろして、とあたしは僚の胸を精一杯の力で押した。