REVERSI
見上げた表情、目の下の泣きボクロ、こんな時まで僚のままなのに、固い表情に体が震えた。
「聖、いい加減にしろ」
いつか聞いたような言葉を吐く僚、呆れてるんだ、こんなあたしに。そう思ったらどうしょうもなく惨めで、
「馬鹿にしないでっ!」
頭の沸点がどこか分からず、あたしは半ばヤケクソに僚の胸を突き離しながら叫んだ。
「馬鹿にしてない。怒らすな」
「なんで、僚が怒るの?」
あたしは僚の冷たい瞳に怯まないようにキッと口を結ぶ。感情が高ぶる。救えない馬鹿だ。
「…うるさいよ、僚だって何考えてるのか分からない、そんなに都合よく現れないで、あたしに構わないで、頼らない、頼れない、そんな立場じゃない!」
そんな女じゃない、京ちゃんを思いながら、僚から香る女物の香水に気をとられて、まるで嘘みたいなタイミングの出会いに目眩すら覚える。あたしは息を呑んで、泣かないように僚を睨みつけた。
八つ当たりだ、完全な、もう本当馬鹿、お願い僚、放っておいて。
だってあたしは何も返せないのに。
「…僚なんていらない、自分の気持ちなんて分からない。いい加減な女でいさせて。」
あたしはもう、僚に涙は見せられない。