REVERSI

────そんなあたしの抵抗なんて僚は構わず、抱きかかえられて、助手席に乗せられて、沈黙の車内。

あたしは唇を噛んだり掌を握ったりしてその空気の重さを紛らわす。言葉なんて、もう出ない。居心地の悪い空気に、なんであたしこんな所にいるんだろうと思う。

頭をぐるぐる回るのは、京ちゃんの複雑な顔に、麻由の涙。僚の感情のない瞳。

それに、もう、分かんないや。だって僚は気付けばいつも傍にいる。その感情はいつまでたっても読めない。あんな事を言ったのに、僚の空気はもう怒りなんて含んでなくて、


「……怒鳴り付けてすまない」



謝るのは、あたしの筈なのに。


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