REVERSI
高ぶった感情の行き先も分からないまま赤信号で、車が静かに停まった。
「…君は知っているか」
沈黙を割くように発した僚の声は信号を見つめたままでひどく静かだった。
あたしはその質問の続きを聞くように僚の横顔に視線を向ける。
「以前、俺の前から去った時もそんな顔をしていた。『関わらないで下さい』といいながら。俺の存在は君を迷わせる。」
言い切る僚は、自嘲したように笑った。
「聖、君は優しい。それに、優柔不断だ。」
ぐさり、とその言葉が胸に刺さる。僚、本当にあなたってストレートだよね。
だけど、実際その通りで、あたしは頷くしかなかった。