REVERSI
まさか、そんな言葉を投げられるとも思わず、だけど彼女の口から出た台詞が嘘みたいに自然で、ドクドクと動く心臓の音だけが煩かった。
「ま、日本をしばらく離れる事になるから、あなたが関わる時間なんてないでしょうけどね」
あたしを見下ろした貴子さんは、決め台詞のように決定的な言葉を告げる。
日本を?
どうして?
分からない、なんか理解できない、しんどい。
ただ、あたしが今つきつけられているのは現実で。僚からの『さよなら』には沢山の意味が含まっていたんだ、と今更気付く。
貴子さんの視線があたしを探るように光った。
会話なんてもうないと全身で告げているのに、その反面、何かいうことはないの?と聞いているように空白の間合いをあたしに向ける。