REVERSI

言いたい事を言うだけ言って貴子さんは通話を終えた。ップーップーと規則的な機械音。あたしは携帯を耳元そのままに休憩室から見える窓の外を流れる雲を見つめて立ち尽くしている。


「ふ、っは」



思わず、漏れた、だってもう、本当、笑える。



「…すごい人」


本当、今度一緒に飲みたい。


関わった時間なんて数えるほどもないのに。



あたしより僚の事を知ってる。確実に僚と同じ時間を過ごしている。


それにずっと、嫉妬、してた。


それを認めたくなくて、感情なんてかなり揺れるくせに、そんなとこだけしっかり嫉妬する自分がひどく恥ずかしくて、見せないように、冷静なようにしていたのに、


「バレバレじゃないか」


『好きなんだと思ったけど』貴子さんなんて、恥ずかしげもなくあっさりとそう言うもんな。本当、かっこいい。




下を向いた顔を上げて、あたしは走り出した。


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