REVERSI

あのまま僚に出会わなければ、『一夜の過ち』としてあたしは忘れてしまっただろうか。


忘れて、一穂の横で微笑んでいられただろうか。


答えは分からない。


ただ、白か黒かを求めたのは一穂じゃなくて、あたしだった。


一穂は何もかも許すから、と言ったから。全てを話した訳じゃないけど最後の数日は、傷つけ合って、疲れて、何度も話し合いをした。



正直、それまで淡白な恋愛しかした事がないあたしにはこれ以上ない昼ドラ気分で。




あたしは一言。



『一穂じゃ駄目』



そう言って、ひどく彼を傷付けた。




あたしの背負う罪はふたつ。




一穂を裏切ったこと。


僚を好きになったこと。



そして運命なのかなんなのか、二人が正真正銘の『兄弟』だという事実。

似てない兄弟。本当に、何から何まで似てないのに。



< 72 / 423 >

この作品をシェア

pagetop