夏

８

「あんたギャクタイされてたんでしょっ、気持ちワりぃんだよっ」
キンキンと喚く声は壁に反響して塞いだ耳の奥にしっかり届く。
「アンタのせいで絶対白井君迷惑してるでしょっ」
どか。どか。どか。
腹を殴られ胃液が出そうになる。
「どうせこの足だって同情引く為のウソでしょ」
ぎちぎち。
太ももを踏み付けられる。
「……っ…っっ」
思わず悲鳴が漏れそうになる。
「どうせアンタなんか暇つぶしとか同情で抱かれてるクセに」
「態度デカすぎ」
「ウザすぎ」
何度めか地面に叩き付けられながら、何処か冷静な頭がそうだね、と答えてる。
永久くんは、同情で触れてくれてるだけなのに、迷惑過ぎる。
今の状況も。
思わず、涙が溢れる。
最初の砂もあって、視界がぼやけて輪郭が掴めない。
「ナニ泣いてる訳？まだまだだシィ」
ぐい、と髪が掴まれる痛さに上半身起こす。
「うわ、すぅげぇ。これが相楽透尚？」