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「い、や、…やだ。やめて……っ」
こんな小さな声になんの力も無い事を私はいやという程知っている。
それでも少しでも口に出して抵抗したかった。

必死に出口に這って進もうとするけど、足を掴まれてざりざりと砂利に削られながら引き戻される。
「嫌だ、いやっ」
人間の手だと思えない程冷たく感じて、気持ち悪い。
触られたくない。
気持ち悪い。
怖い。
ただ離れたいという一心で、掴まれた足をばたつかせて蹴る。

「イテッ」
足が空じゃなくて何かに当たる。

足が当たったのか、頬を赤くした男がのしかかる。

「うぜえ~静かにしろよっ」
苛々と声を荒げると手を振り上げる。

ばんっ。
頬を思い切り平手打ちされる。

全力を込めたのか、頬が焼けたようにひりひりと痛む。
脳が揺れて気持ち悪い。
酔ったようにぐらぐらと視界が揺れて、意識がかすれる。

「何でそんな嫌がる訳ぇ?白井君となんも変わらないっしょぉ」


張り付くような手のひらが体中にべたりべたりと張り付く。



違う。

否定の言葉は声にならなかった。

涙しか出てこない。

違う、違う。

永久くんは私の事、何とも思ってなくても。

私は、永久くんだけが。


声が出ない。


言葉にするのも、はばかられる








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