夏
15
「羽夏っなおは何処だっ!?」
がしゃ。
音を立てて乱暴に教室の戸が開けられる。
放課後の教室は羽夏ひとりだ。
なおのかばんが掛けられたままの机の前に頼りなげに立っている。
「永久っ、探してるんだけど…」
「なんで一緒じゃかったっっっ」
羽夏の言葉に思わずが怒声が漏れる。
応える事も出来ず、俯く羽夏。
「永久」
春兎が肩に手を置く。
落ち着けというつもりだろうけれど、落ち着ける訳がない。
「いつからいない」
「分からない。私が、先生に呼ばれてる間だから、最低でも一時間以上…」
羽夏の言葉に思わず唇を噛む。
なおが、ひとりで、行方も分からない。
いまだに、ヒトが怖くて、小さな物音にすら怯えて一人で泣くのに。
守ると約束した。
なおの周りのあらゆる敵からなおを守ると約束したのに。