17



なおを見つけた時は、体の震えが止まらなかった。
怒りと、恐怖で。

ざらついた地面に押し倒されて、制服を乱されて意識朦朧としたなおを見た瞬間理性が飛んだ気がした。

体が勝手になおの元に走り出す。


なおに覆いかぶさる男の腹を思い切り蹴り上げ、足元に蹲っていた男達にも同様に蹴りあげ、殴りかかった。
数人の女の悲鳴が聞こえた気がしたが、頭に血が上って何も聞こえなくなる。


「やめっ…いてぇっっっ」

「うわあああああ」


埃まみれの部屋に、むっとした鉄錆の臭いが広がる。

大体は立ち上がる前に最初の一撃を加え、虫のように地面をのたうち回る。
殴り返してくる者もいたが、本格的に体術を習い、痛みにもびくともしない俺を見て戦意を無くすような輩は大したこと無い。
もう逃げる事しか考えていないような奴も容赦無く片っ端から意識を無くすまで殴っていく。
拳の皮が切れて血が滲むのも気付かなかった。



加減も忘れ、その場にいた男達全員を痛めつけてから、振り返る。
なおを羽夏が見ている所だった。


「触るな」


唸るような声が自分の喉から出る。

びくりと羽夏の体が止まる。



ゆっくりなおに近付いて足や腕に触れる。
折れている箇所は無さそうだった。
だが、なおの白いYシャツやスカートには足跡が付けられている。
それも女物の小さい靴跡だ。
隅のほうで小さくなる女達を睨みつける。


「ひぃっ」



醜い声が聞こえる。吐き気がする。




なおの膝裏と、背中に手を回し、ゆっくり抱き上げる。
赤よりも暗い色に変色しつつある痣に触れてしまったのか、少しなおの眉が顰められる。


だが、目は開けられない。



「春」



既に手配していたようで、春は頷いて裏門に、とだけ言葉少なに喋ると、手配した家の車まで付いてきた。


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