夏
19
ごめんなさい。
ごめんなさい。
暗い部屋に、誰かとふたり。
ああ、あの頃の夢だ。
まだ、義父がどうしてそんなに怒るのか分からなくて。
今まで、お母さんと二人で暮らしてきて、間違ったことをしたり、悪いことをすれば叱られてきた。
でも、お母さんはその倍以上、抱きしめて笑顔で接してくれていたから。
お母さんが居なくなって、突然義父がすぐ怒鳴って、暴力を振るうようになったことが理解出来なかった。
自分がどんな悪いことをしてしまったのか、今までの生活を振り返って考えても分からなかった。
泣いても、痛いから、苦しいから止めてとお願いしても終わらなくて、どうしていいのか分からなくて、
「どうして私はぶたれるの…?」
腫れた頬を押さえながら、さんざん殴って気が晴れて気持ち良く酒を飲んでいる義父にとうとう聞いてみた。
悪い所があるなら治して、義理でも家族なこの人と仲良く暮らしたいと思った。
あの人は赤くなった顔を歪めて笑いながら言った。
「お前が悪い子だからだ。だからお前の母親は死んだんだ、俺がこうやって教育しないと、お前はもっと悪くなる」
その頃はもう小学校でも軽いイジメが始まっていて、だからなのだと何故かすとんと納得した。
義父の暴力も学校のイジメも自分のせいなのだと。
改善する為には義父に『教育』してもらうしかないのだ。
7歳だった私は素直にそう思った。
料理も洗濯も掃除も勉強も。
なにも出来ない自分が悪いのだ。
でも、出来るようになったら義父か……誰か。
そう見たことはないけれど誰か。
誰かは私の名前を呼んでくれて、傍に座って触れてくれるだろうか。
いつか