愛の毒が廻る頃には 【超短編集】
布団をかぶった僕の携帯が、ビービーと嫌な音を立てる。

午後四時半。

文化人類学の授業はとっくに終わっている時間だ。

恐る恐る携帯を手に取った。すると恐怖連鎖の様に、玄関の呼び鈴がけたたましく鳴る。

ドアを開けると、田中が立っていた。


「高橋!俺だよ田中だ。俺…やったよ!」

僕の心臓はバクバクとした不協和音を立てる。

「田中、お前…“やった”って…何をやったんだ?」

「告白成功したよ!彼女に付き合ってくれって言ったんだ。そしたら何と、彼女OKしてくれてさ!俺、超嬉しいよ。生きてて良かった」

田中はまくし立てる様に喋り続ける。最悪の事態を恐れていた僕は胸を撫で下ろした。

「よ、よ、良かったじゃねえか田中!!奇跡だな、あんな美人と付き合えるなんて」



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