愛の毒が廻る頃には 【超短編集】
「二万…?話になんねーな。ちなみに何を御希望で?」

藤井は顔を赤らめる。その40オーバーの照れた顔が、まるで少女みたいな恥じらいを見せた。

「えっとその………仮面ラライデーです…」

「…あんたねえ…。一番人気だよ。二万であの“仮面ラライデー”に成れると思ってんの?

つーか、こっちが逆に聞きたいわ!何で二万でイケると思ったんだ?」

店主は憤慨した素振りで、藤井を一瞥し煙草に火を付けた。

「…ですよね。言ってみただけです。

僕はこの通りホームレスです。日雇いで稼いだ二万が限界でして。これでも、この歳でやっと稼いだんです。

一応…値段表みたいなのがあったら見せて頂いてもいいですか?」



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