愛の毒が廻る頃には 【超短編集】
「じゃあ、エボンゲリオン…」

「五億。根強いマニアがいるからね」

藤井は目を白黒するしか無かった。到底自分には手も届かないヒーローだ。

やはりかっこ良くて皆に人気のあるヒーローは、その値段も手に届かない価値なのだ。

「あんた、どうしてもヒーローになりたい訳?」

店主はプカプカと頼りない煙を吐き出して、藤井を睨んだ。

「僕は人生やり直したいんです。どうせやり直すなら、昔憧れたヒーローになって、人生をやり直したいんです。

なかなかお金を貯めたくても、こんな歳くった住所不定のホームレスじゃ、どこも雇ってはくれません。

…ちなみに珍しい所で…“ネズミ小僧”なんてメニューにあったりします?」



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