愛の毒が廻る頃には 【超短編集】
「残念だな。歴史マニアには飛ぶ様に売れるよ。一千万」

藤井は深い溜め息を吐いた。その白い溜め息は、店内の冷えた空気に瞬く間に消えた。

「…やっぱり、僕みたいな文無しがヒーローに成るのなんて無理ですよね。帰ります」

藤井がトボトボと店主に背を向けて歩き出すと、店主はオイと声を掛けた。

「一つだけあるぞ。文無しでもヒーローになれるモンが」



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