愛の毒が廻る頃には 【超短編集】
《拝啓》
ヒーロー屋
店主様
いつぞやは、大変ありがとうございました。
もうあれから、15年以上は経ちましたでしょうか。
あの時二万しか持ってなかった私に、私でも憧れのヒーローに成れると教えて下さった店主様に、心から御礼を言いたいのです。
そう。店主様の言われた通り“父親”になりました。
父親でなくても『身近な誰かのヒーローになれ』と言って下さった店主様。本当に素敵なお言葉で、私はあの時、目からウロコの気持ちでありました。
あれから死に物狂いで何とか職を見つけ働き、結婚し、こんなヒーローとは程遠い私でも幸せな家庭を持つ事が出来ました。
人を心から愛する事が出来れば、誰でも誰かのヒーローに成れるものなんだと知りました。
本当に感謝しております。