愛の毒が廻る頃には 【超短編集】
今日も田中は彼女を見つめていた。

田中の長い溜め息が漏れる。教授の講義など上の空だ。

田中は明らかに、彼女に恋をしていた。

無理はない。
僕も初めて彼女を見た瞬間、女優さんかと思う程の美しさにノックアウトされていたから。

「田中。お前、あの一番最前列の美人に一目惚れれしたんだろ?」

「あ?やっぱりバレてたか」

田中は照れた様に小さく笑った。

文化人類学の授業で女子生徒はその彼女一人だけ。

彼女は僕等と同じ大学一年生。その授業を受けている十数名の男達は皆、あの美人見たさにつまらない授業を受けてるに違いなかった。

でなかったら、あんな眠くなるだけのつまらん授業に出席する訳が無い。



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