愛の毒が廻る頃には 【超短編集】
家に帰って寝床についたが、田中の真剣な目が忘れられずにいた。

田中は大人しい奴だが、時々何を考えているのか分からない時がある。


『上手くいかなかったら全員殺しちまおうかな』

そこには僕自身も含まれているんだろうか。

まさかな…。

終わらないメロディーを奏でるみたいに、身震いが止まらない。

まさか。

次の日、初めて僕は文化人類学の授業を休んだ。文化人類学は、一回授業を休んだだけで、多量のレポート提出を迫られる厳しいペナルティがつく。

そんな事は気にしていられなかった。



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