=キング of ビースト=
「ちょっと痛いかもしんないけど、我慢しろ。」
と言って私に両手を伸ばしたと同時に体が、フワッと浮いた。
「…ちょ‥‥っ!!」
あれだ。お姫様抱っこ。あまりにも恥ずかしくて身をよじろうとしたら、
「動くな。ケガに障る。」
‥そうしよう。早く直したいし。お姫様抱っこされながら部屋を出ようとした夜琉を背に紅雨、璃玖、弘樹、志織さん、広斗さん、広未さん、もう一人知らない人がいるのが見えた。
最悪。お姫様抱っこ、こんなにたくさんの人に見られるなんて!!
部屋を出て隣の部屋に入ろうとした夜琉。でも私の視界に入ったのは、亮で。
私は夜琉を掴んでギュッと握った。それに気づいた夜琉が、見てくる。
「…り‥ょう……。」
私が呟いたと同時に亮がしゃがみ込んでいた所まで足を進めた夜琉。
それに気づいた亮は立ち上がった。
「…りょ‥う、ケガ‥してな…い?」
すると亮は泣きそうな顔をして
「俺は大丈夫。でも由莉がっ!!ごめんなぁ。」
亮、前まで金堂って呼んでたのにいつの間名前で呼んでたっけ?
と、どうでもいいことが頭に浮かんだ。
「謝んな‥いでー…。りょ‥う、守って…くれ‥たし。感謝…してる‥…。」
「ありがとう。」
そう亮が言ったのが聞こえたが、夜琉が足を返したのでよく分からなかった。