君の左手
古い鉄道の下を潜り、静かになった商店街を抜ける


小さい頃から見てきた駄菓子屋



変わらない魚屋のおじちゃん





アユミのお父さんはお寿司屋さんで働いている


まだ皆が寝静まる頃に家を出て、魚を取りに行っていた


夜は早く寝ちゃうし朝起きるともう居ない……







顔を合わせる時間は少なかったけど学校の行事には必ず参加してくれた


運動会では

「アユミは鈍臭いなぁ♪」

って笑ってたっけ…―






お父さんと話す時間は普通の親子より限られてたけど、アユミ……尊敬してるんだよ



家族の為に朝早くから頑張ってくれてるお父さんの事



……大好きなんだよ











お父さんが働いてるお寿司屋さんの前を通り過ぎた


今日もまた、お父さんは魚を取りに行くのかな…?



お母さんもお兄ちゃんもアユミも居ないあの家を出て……
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