君の左手
椅子に座って一口飲むと…シチュー独特の粉っぽさが広がった



「アユミのお母さんから連絡あったから、おばちゃんが責任持って今日は預かります♪

食べたらゆっくり寝なさい」


広告を眺めながらおばちゃんがコーヒーを啜る


湯気で曇った眼鏡に愛を感じた




「ところでさ、この上着って男物?アユミ、お兄ちゃんのでも着てきたの?」



背もたれに架けられた上着を指差して葵が問い掛けた




グレーの衿が立ってるお洒落なジャケット

公園で出会ったアイツが被せた物…―






『お兄ちゃんのじゃないよ。
さっき公園で会った男が貸してくれた……』



漫画の1コマの様にカシャンとスプーンを落とし恐る恐る葵がこちらを向いた


目の前のおばちゃんも、カーペットで遊んでいた剛も

皆の視線が一気に集中する
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