君の左手
なんか恥ずかしい。


なんか… 変。






前髪を掻き上げて縺れそうな足を前に進めた。


アイツの視線が気になってる自分が凄い悔しい。




「待てよ、泣き虫!」


アイツの力強い腕に掴まれて、後ろに倒れそうになった。

引っ張っられた拍子に背中に当たるのは… アイツの胸。



『ちょっ、何?!びっくりするじゃ……』

「あんたじゃねーよ。」




アイツに触れる部分が熱くなって……

どんどん熱を帯びてくる。


火傷しそうな背中を離したいのに、右腕が捕われてて上手く動けないよ…。






「俺の名前…。

あんたじゃなくて千彰。


…橘 千彰。」









そう言って、千彰はアユミの中に入り込んできたよね。


千彰がこんなに大きくなるなんて……


あの時のアユミにはわからなかったんだ。





だって、出会いが最悪だった。

笑っちゃう位最悪…。






でも…―


君に恋をした。





楽しい事ばかりじゃなかったよね。


辛い事のが多かったかもしれない。





けど、そんな中で… 君は幸せをくれたんだ。

心がホクホクするみたいな…。





宝物みたいな幸せを…―





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