君の左手
豆の理由
「お前さ、いつも泣いてるな…。
人生そんなに悲しい…?」
『いっ…色々あるんだよ!
それに、お前じゃなくてアユミ!! 河口唖弓。』
公園のベンチに座った。
何故かアイツ… 橘千彰に誘導されて、素直に従ってる。
時間は昼過ぎになって、少しずつ親子連れが増えてきた。
ブランコで遊ぶ兄弟とか、砂場でおままごとをする女の子。
その光景がほほえましくて、自然と目を細めた…。
子供達を見てた時、急に橘千彰が近付いてきて…、
「な〜んだ。
また泣いてんのかと思った。」
そう言って…、アユミの頭をポンってしたんだ。
大きくて、ちょっとごつい手。
間接の所に握り潰したみたいな豆の跡があった。
『ちょっ…、泣いてないし!
手がごつごつしてて痛いよ!!』
恥ずかしくて… 橘千彰の腕を振り払った。
男の人に優しくされるのは慣れてない。
ずっと突っ張ってきたせいか、素直に甘える事を忘れちゃった気がするんだ――。
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